前置詞の「by」と「with」は、ともに日本語では「~で、~によって」といった意味を持っています。誰かが何かをなす際に、どのようになされたのかを表現する際に使われます。
前置詞「by」と「with」は日本語では似たような意味を持っているので、混同して用いられることが多いと思われます。また、曖昧な感覚で使っている人もいるのではないでしょうか。
今回は、by と with の違いと使い分けについて整理してみました。
byの意味と使い方
byは、基本的に「何かしらの行為が誰もしくは何によって行われたのか」を示すために使われる前置詞です。
このため、by は受動態で使われることが多いです。
この手紙は母によって書かれました。
この使い方では、それほど理解が難しくないのではないでしょうか。
by の使い方が難しくなってくるのは、能動態で使われる場合です。
by が能動態で使われるのは、抽象的な方法や手段などによりなされたことを表します。また、どういったことを「する」ことによりなされたのかを表現します。
私はそこへ電車で行きました。
最も基本的な by の使い方です。教科書などでも挙げられるような使い方ではないでしょうか。
顕微鏡検査で、物質を観察した。
この例文では、microscopy(顕微鏡検査)という抽象的な手段により物質を観察した、ということを示しています。
顕微鏡を使って、物質を観察した。
この例文では、microscope(顕微鏡)を用いることにより物質を観察した、という意味合いになります。この用法では、by の後に動名詞(動詞のing形)が使われることが多いですね。
with の意味と使い方
with は、具体的な道具や機器によりなされたことを表すために使わる前置詞です。行動主(主語)がある行為を行う際、何を使ったのかを表現します。
顕微鏡で、物質を観察した。
この場合、I(私)はmicroscope(顕微鏡)具体的な機器により(を使って)物質を観察した、ということを示します。
また、with は、行為自体を描写するためには使われません。
上記の例でいえば、microscope は、observe(観察する)自体を説明するものではなく(直接的に関与するものではなく)、観察が行われた際に使われたもの(道具)を示すだけに過ぎないのです。
受動態における by と with
受動態では、「by」と「with」とで、伝えられる意味が異なることがあります。同じ文章でも、これらの前置詞が異なるだけで、どれだけ意味が違ってくるか、見てみましょう。
窓は石で(石によって)割られた。
この場合、どこからか落下してきた石で割られたか、飛んできた石によって(意図せずに)割られた、といったような意味に受け取ることも可能です。つまり、窓を割ったのが「何」なのかに主眼が置かれています。
それでは、上記の例文の「by」を「with」に変えてみましょう。
窓は石で(石を使って)割られた。
この場合、誰かが窓を割り、割るために石が使われた、といった意味に解釈できます。つまり、窓を割った「手段」や「道具」について主眼が置かれています。
前置詞「by」と「with」、上手に使い分けたいですね。
without の意味と使い方
なお、「by」と「with」の反対の意味を持つ「without」は、「~を使わないで、~せずに」の意味を持ちますが、「without」は「by」と「with」の両方の反対語として使えます。
顕微鏡を使わずに、物質を観察した。
顕微鏡を使うことをせず(使わず)に、物質を観察した。
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Swan, Michael, Practical English Usage, third edition, Oxford University Press, 2005(⇒https://amzn.to/3mABiHh), p. 96