不可算名詞(物質名詞や抽象名詞)でも数えられる?複数形にしたり、不定冠詞 a, anをつけるべき場合とは

英文法

みなさん、物質名詞や抽象名詞などの不可算名詞でも、複数形にしたり、不定冠詞をつけたりすることができる場合があるということを知っていますか。

今回は、不可算名詞が可算名詞として扱われることについて述べたいと思います。

不可算名詞の基本的な知識

「不可算名詞」は、可算名詞とは異なり、「数えることができない名詞」のことです。普通は、不定冠詞 a, an をつけたり、複数形にすることはできません。基本的に、抽象名詞、物質名詞、固有名詞がこのカテゴリに入ります。

通常は、knowledge(知識)などのように抽象的な意味を表す抽象名詞や、water(水)などの物質を表す物質名詞は、不可算名詞として扱われることになります。

そのため、water などの物質名詞や knowledge などの抽象名詞の量や程度などを伝えたい場合は、通常、容器などの単位を使って表します。

例えば、「水」を数える場合は、a water とは言わず、例えば a glass of water と、容器である glass などを使って表現します。「ある一つの知識」を表現する場合は、a piece of knowledge と言ったりします。

上記のように、物質名詞や抽象名詞は、通常、不可算名詞として扱います。

ただ、不可算名詞でも可算名詞として扱うことができる場合があります。つまり、場合によっては、物質名詞や抽象名詞でも不定冠詞 a, an をつけたり、複数形にしたりすることが可能です。

抽象名詞や物質名詞を可算名詞として扱う場合とは

基本的な考えとしては、上記のような抽象名詞や物質名詞が具体性を持ったときに、冠詞「a」をつけることが多いのです。

例えば、hair(髪)は、「あの人は金髪だ」などというときは、”That person has blond hair”などと言って不可算名詞として扱います。

しかし、「私の彼に白髪が数本生えていたの」などというときは、”My boyfriend had a few gray hairs”などと言います。

また、beauty(美しさ)も抽象名詞ですので、”Beauty is in the eye of the beholder”(美は見る人の目に存在する、美しさの基準は人によって異なる)など、普通は不可算名詞として扱います。

しかし、”My girlfriend is a beauty”(俺の彼女は美女だぜ)などという場合は、抽象名詞を可算名詞として扱うこともあります。この場合、「美しい」という抽象的な事柄が、「美女」という存在により具体化されたと考えることができるでしょう。

なお、江川泰一郎著『英文法解説』では、物質名詞や抽象名詞を具体化して可算名詞として扱うことを「普通名詞化」と称しています。

逆に言えば、物質名詞や抽象名詞について、可算名詞として扱うのはその名詞に具体性を持たせたいからであり、不可算名詞として扱うのは具体性が必要ないから、と言うこともできます。

例えば、stone(石)の場合は、「石ころ」のように具体性を持たせたい場合、可算名詞として扱いますが、「石材」のように具体性が必要ではなく材料として認識している場合は、不可算名詞として扱うのです。

「形容詞+抽象名詞」で普通名詞化

抽象名詞に形容詞がついた場合、可算名詞として扱われることが多いです。

例えば、”He has a thorough knowledge of programming”(彼はプログラミングに精通している)などのように、抽象名詞 knowledge に形容詞 thorough(徹底的な)がつくことにより、不可算名詞が具体化され、可算名詞として扱われるのです。

それでも、困ったことに、どんな形容詞がついても、可算名詞にならず、冠詞「a」をつけられない抽象名詞も存在します。これについては、綿貫陽、マーク・ピーターセン共著『表現のための実践ロイヤル英文法』に詳しい記述が載っています。形容詞がついても冠詞「a」がつかない主な抽象名詞は以下の通り。

advice(助言)、applause(拍手喝采)、conduct(品行)、damage(損害)、equipment(設備)、fun(楽しみ)、harm(害)、homework(宿題)、information(情報)、luck(運)、news(知らせ)、progress(進歩)、weather(気象)、work(労働)(『実践ロイヤル英文法』p. 339)

抽象名詞や物質名詞が具体化されると可算名詞として使われるのは、そういう傾向があるということだけであり、決してそれ自体がルールではない、ということを覚えていてください。

可算名詞と不可算名詞の区別

英語において、water が「数えられない」と聞いても、多くの人は納得できると思います。ただ、英語の不可算名詞には、私たち日本人の感覚からすれば「え、これが不可算名詞なの?」と驚くようなものもあります。

例えば、equipment(設備)。日本人の感覚からすれば、「設備」は可算名詞のように感じる方が多いと思いますが、英語で equipment は不可算名詞です。「個々の装置」を意味する場合には、可算名詞として扱われることもありますが、通常は a piece of equipment のように表現します。

英語と日本語との間で感覚が異なるため、不可算名詞と聞いて違和感を覚えることがあるかもしれません。そういう場合は、「英語ではそういう風になっているんだ」と深く考え込まずに覚えていくようにしましょう。

可算名詞と不可算名詞の違いについて、Randolph Quirk、他著『A COMPREHENSIVE GRAMMAR OF THE ENGLISH LANGUAGE』には、以下の記載があります。

“It may be noted that, apart from a tendency for concrete nouns to be count and for abstract nouns to be noncount, there is no necessary connection between the classes of nouns and the entities to which they refer. In some related languages, the nouns corresponding to information, money, news, and work, for example, are count nouns, but in English they are noncount”(p. 251)

英語において、どれが可算名詞でどれが不可算名詞なのか、といった区別は、必ずしも名詞の種類や意味に基づいてなされるわけではない、ということです。

つまり、可算/不可算の判断は、必ずしも論理的に行われているわけではなく、慣習的な側面もあるということですね。

結局のところ、可算名詞と不可算名詞との区別を判断するためには、多くの英文に接することが大切なのでしょう。

参考資料:
・江川泰一郎、『英文法解説』、金子書房、2009
・綿貫陽、マーク・ピーターセン、『表現のための実践ロイヤル英文法』、旺文社、2006
・Quirk, Randolph, et al., A Comprehensive Grammar of the English Language, Longman, 1985