「仮定法」というと、英語に関わらず、言語を学ぶ上で難しいトピックである。
当然、つまづいたことがある人や、理解するのに時間がかかった人も多いと思われる。
ただ、確かに難しい部分はあるものの、整理して段階的に学んでいけば、実は「仮定法」はそれほど複雑なルールがあるわけではない。
おそらく、それまでに習ってきた直説法との兼ね合いで多少の混乱が生じる部分が、「仮定法」に難しい印象を与えるのだろうと思う。
後は、「仮定法」に限った話ではないが「慣れ」の問題である。最初はとっつきにくい印象があるが、あきらめずに取り組んでいけば、大したことはないことが分かってくるだろう。
焦らず、少しずつ気軽に学ぼう。
ぶっちゃけ「仮定法」って何?
まず最初に、「仮定法」って何なのか、簡単に説明しよう。
「そうだったらいいのにな」(作詞:井出隆夫作詞 作曲:福田和禾子)という童謡をご存じだろうか。
歌詞の一部を紹介すると、以下の通り。
うちのおにわがジャングルで
こいぬのタローがライオンだ
そうだったらいいのにな
そうだったらいいのにな
これが「仮定法」だ。
つまり、「現実には起こりえないことを仮想したり、自分の願望や欲求・要求を述べる」のに用いられるのが仮定法なのである。まあ、厳密にいえば、これが全てではないのだが、とりあえずこれが仮定法であると覚えよう。
上記の歌詞でいえば、「自宅の庭がジャングルである」ことや「タローという名前のライオンを家で飼う」というのが、現実にはあり得ない子供の願望である。
もちろん、歌詞が想定している歌い手が、日本の一般家庭の子供ではなく、アフリカの王族の子供であれば、話は違ってくる。歌詞の内容もあながち非現実なことではないのかもしれない。その場合は、仮定法ではなく直説法を使うこともあるだろう。
ただ、普通の読解能力があれば、この歌詞の内容が、ありえない非現実なことを子供の素直な願望として描いていることが分かるだろう。
それこそが仮定法なのだ。
次は、仮定法の時制を見ていこう。まずは、仮定法の基本(?)となる「仮定法過去」から。
仮定法過去とは
これから仮定法過去の基本について学ぼう。
さて、次の文章をみてほしい。
お庭がジャングルだったら、とてもいいのにな。
上の例文を見て、「あれ、日本語は現在形のようだけど、英文は過去形?しかも、were っておかしくない?」と思った方もいるだろう。
実は、これは「仮定法過去」と呼ばれる時制なのだ。
あり得ない出来事を想定している場合、このように過去形を使うのである。ただ、仮定法過去が、普通の(つまり直説法の)過去形と違う点がある。
上の文章でいえば、my garden は3人称単数なので、普通の過去形であれば、be動詞を was として my garden was するべきなのが、仮定法過去の場合は、人称に関わらず全て were となるのだ(ただ、最近は、特に話し言葉で was を使うこともある)。
ちなみに、細かいことだが、jungle は可算名詞でも不可算名詞でもどちらでも可能だが、例文では the jungle としている。これは、子供だと想定される話し手が「どこにでもあるようなジャングル」ではなく、「アフリカにあるようなジャングル」を思い描いているからである。
さて、もし過去形(仮定法過去)を使わずに普通の現在形で表現すると、それは直説法となり、「起こりえない仮想の話」というニュアンスはなくなってしまう。
上の文を直説法にすると、以下のようになる。
お庭がジャングルだったら、とてもいいよね。
どうだろう。「だったらいいのにな~」という子供の無垢で無邪気なニュアンスは消え失せ、どこかの鼻持ちならない富豪か、高慢ちきなご婦人、もしくは小生意気なお坊ちゃんが、お金にモノをいわせて庭をジャングルにでも改装しようかな、なんて考えている情景が思い浮かぶようではないか。
このように、事実で起こる可能性があるものは「直説法」を用い、ありえない仮想の話は「仮定法」を使う、ということをまずは覚えておこう。