aとtheの違いと使い分け: 冠詞の使い方へのヒント

冠詞である a/an と the との使い分けに悩む人が多いようです。

そりゃ悩みますよね。日本語には冠詞なんてないんですから。

しかも厄介なことに、冠詞の使い分け如何によって、文章の意味合いがまるっきり変わってしまうことがあります。短い冠詞の選択を間違えたために、文章全体が間違ったニュアンスを伝えてしまうことも十分ありえるのです。

今回は、そんな厄介な a/an と the の違いや使い分けについて、説明します。

a/an と the の使い分け

さて、冠詞の a/an と the の使い分けについてですが、あまり最初から難しいことを言ってしまっても混乱するかと思います。

ですから、ここでは詳細な説明をあえて省いて、a/an と the を区別するための単純なルールを打ち出してみましょう。

その単純なルールとは、以下のようなものです。

「a/an は特定されていないもの。the は特定されているもの。」

これだけです。まあ、どこかで見たことがあるかもしれませんね。学校の教科書でも同じようなことは触れているのではないかと推察します。ちなみに、a/an を「不定冠詞」、the を「定冠詞」といいます。

冠詞のルールで他によく知られているものに、「初出のものには a/an をつけて、既出のものには the をつける」というものがあると思います。このルールは、つまるところ、「特定されているかどうか」とほぼ同じような意味を持っています。

なぜなら、初めて登場したものは特定されておらず、一度話に出てきたものは特定されていると考えられるからです。

この世に1つしかないものは特定されているので the

「太陽(sun)などこの世に1つしかないものには the をつける」的なルールもよく知られていますが、これも結局「特定されているか否か」で説明できます。

そりゃそうです。この世に1つしかないんだったら、特定できますよね。

というわけで、細かいルールを除けば、結局「a/an と the との使い分けは、その大部分が特定されているかどうかに関わってくる」と考えてもよいと思います。全てじゃないですよ。「大部分」です。

そして、その他のルールは、この「特定されているか否か」の基本ルールの応用に過ぎないと思います。

で、この「特定されているかどうか」というのが結構知れ渡ったルールであるにも関わらず、巷でいまだに冠詞の使い方で混乱が生じているのはどうしてでしょうか。

その原因の一つに、冠詞というものが「習うより慣れろ」的な側面を持っているからかもしれません。

冠詞の使い方の例

今回の記事では、皆さんが冠詞の使い方に慣れるように、いくつか例を挙げたいと思います。

なお、以下の説明は、結構私自身の経験と感覚に基づいた部分が大半ですので、もしかしたら公式の見解(そういうものがあるか知りませんが)とは異なる部分があるかもしれません。ですから、あくまで私一個人の見解であることを踏まえたうえで、お読みください。何等かのヒントになれば幸いです。

① A man is standing in front of a house.  The man is painting the house.
(一人の)男が(1軒の)家の前に立っている。その男は、その家のペンキ塗りをしている。

稚拙な文章ですがご容赦ください。でも、分かりやすいんじゃないでしょうか。

この例文で、最初に man と house が出てくるときは、書き手と読み手でそれら man と house について情報を共有しておらず、単なる「一人の男」と「一軒の家」が初めて描写されているので a/an がついています。

しかし、2つ目の文章では、「男」と「家」の存在がすでに特定されているので、the が付けられているんですね。

② There is a girl in the room.  The girl is combing her hair.
部屋には(一人の)女の子がいる。その女の子は、髪をくしでとかしている。

この場合、girl は初出なので a が付くのは分かります。しかし、room も初出なのに、なぜ the がついているのでしょう。

この場合、書き手が room の存在を特定しており、その感覚を読み手に伝えているものと考えられます。つまり、「部屋はもうその空間として特定されており、現在注目しているのは女の子である」といった感じです。

例文①の場合は、man と house が読み手に伝えられ、その存在が認識されます。我々読み手としては、引き気味のカメラから1人の男と1軒の家を眺めている状態です。

例文②の場合は、room の存在は、すでに空間としてそこに存在しており、もう新たに読み手に対して認識を促すものではないのです。書き手がそのように特定しているのです。そして、書き手が読み手側に新たに認識してほしいのは、「女の子」であるわけです。

日本語の文章でもありますよね。「その部屋には女の子がいた」みたいな書き出しではじまる物語や小説。細かく考えれば、「その部屋ってどんな部屋だよ」みたいなツッコミが入りそうですが、書き手からすればそれは大した問題ではなく、「その部屋だからその部屋なんだよ」といった感じです。

このように、しばしば「書き手の感覚が優先される」ケースもあるようです。その場合、書き手がすでに特定しているものは、読み手も否応なく特定するような感覚です。こういったケースは、特に小説などの文芸作品に多いと思います。

ところで、お気づきになったでしょうか。a/an と the の使い分けについて、日本語とある共通点があるのを。

a/an と the の使い分け 日本語との共通点

その共通点とは助詞である「が」と「は」の使い方です。例文で、a がつくものについては「が」が、the がつくものについては「は」が使われているのです。

① A man is standing in front of a house.  The man is painting the house.
(一人の)男が(1軒の)家の前に立っている。その男は、その家のペンキ塗りをしている。
② There is a girl in the room.  The girl is combing her hair.
部屋には(一人の)女の子がいる。その女の子は、髪をくしでとかしている。

そうです。日本語でも、初出と既出とを「が」と「は」の使い分けで区別しているのですね。これは、日本人としてはなかなか気が付かないところではないでしょうか。

そして、これら日本語文の「が」と「は」を入れ替えて文章を作ると、なんだかおかしい感じがしますよね。少なくとも、英文のニュアンスとは大分異なってしまいます。

この「が」と「は」の使い分けについては、日本語を学ぶ多くの外国人が苦労すると聞きます。

結局、外国語を学ぶ際に難しいと感じるのは、こういった「うまく説明できないけれど変に感じる」ような部分なのですよね。「理屈」じゃなくて「慣れによる感覚」が占める部分が大きいですから。

生の英文に触れるとき、冠詞の使い方について少し注目しながら読むことで、冠詞に対する感覚が磨かれると思います。基本的なルールを踏まえながら、普段は脇役の冠詞にも少し注目してくださいね。

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