「それぞれ」を意味する each と respectively がそれぞれ異なる理由 知っておきたい使い分け

英文法

「それぞれ」を英語に訳す際に、each を使うことが多いと思います。

また、一般的にはあまり使われませんが、respective や respectively を使って、「それぞれ」を訳すこともできます。技術英文では時々見られる表現です。

このように、each も respectively も、「それぞれ」の訳語として用いられることがありますが、これらの単語が持つ意味合いはそれぞれ異なります。

each の基本的な使い方

まず、each から見てみましょう。

each を使うことにより、ある一定の範囲やグループに属する複数の物の個々について言及することができます。

例えば、以下の文章があったとしましょう。

「このシステムは3つの装置で構成され、それぞれの装置は入出力部を備える。」

これを英語にすると、例えば以下のようになります。

This system is configured with three devices, each including an input/output section.
このシステムは3つの装置で構成され、それぞれの装置は入出力部を備える。

また、文章を分けると、以下のようになります。

This system is configured with three devices. Each of the three devices includes an input/output section.
このシステムは3つの装置で構成され、それぞれの装置は入出力部を備える。

このように、「このシステム」という範囲に含まれる「3つの装置」のその各々について個別に説明するために「each」という単語が用いられます。

respectively の基本的な使い方

これに対し、respectively は、例えば以下の場合に用いられます。

The devices A, B, and C include input/output sections 1, 2, and 3, respectively.
装置A,B,Cは、それぞれ入出力部1、2、3を備える。

この場合、「device A」は「input/output section 1」を備え、「device B」は「input/output section 2」を備え、そして「device C」は「input/output section 3」を備えているという意味になります。

つまり、ある1つのグループの事柄が羅列され、それに1対1で対応する形で、もう1つのグループの関連する事柄が羅列される場合に、respectively が用いられるのです。

each と respectively の違いと使い分け

以上をまとめると、each が、あるグループや範囲における複数の事柄のうち、個々の事柄について述べるために使用されるのに対し、respectively は、ある1つのグループや範囲における複数の事柄に1対1に対応する形で、もう1つのグループや範囲における複数の事柄を羅列する際に使用される、ということです。

では、上記の文章 “Each of the three devices includes an input/output section” をそのまま respectively を使って、”The three devices include an input/output section, respectively” と書き直すことはできるでしょうか。

この場合、an input/output section は1つであり、「複数の羅列された事柄」ではありませんので、respectively を使うことはできません。

それでは、”The three devices include three input/output sections, respectively” の場合はどうでしょうか。

この場合では、「ある1つのグループの属する複数の事柄」として「three devices」があり、「もう1つのグループに属する複数の事柄」として「three input/output sections」がありますが、これらの事柄は「羅列」されておらず、また「1対1に対応」していないため、「respectively」を使って表現することはできません。

そして、”The three devices include input/output sections 1, 2, and 3, respectively”としても、「three devices」が羅列されておらず、「input/output sections 1, 2, and 3」と1対1に対応していないので、「respectively」を用いることができないのです(つまり、「three devices」のうちどれが、例えば「input/output section 1」に対応するのかが明らかではないのです)。

respectively を使わない方が良い例

ところで、羅列する事柄が多すぎる文章では、「respectively」をなるべく使わないほうが良い、とする意見もあります(片岡英樹著「必携技術英文の書き方55のルール」 p. 154)。例えば、以下の文章を見てみましょう。

The metal members A, B, C, D, E, and F are placed on the tables 1, 2, 3, 4, 5, and 6, respectively.
金属部品A,B,C,D,E,Fは、それぞれ台1、2、3、4、5、6の上に載置される。

この文章では、「respectively」は正しく使用されていますが、読み易さという点で、あまり好ましくないでしょう。

“The metal member A is placed on the table 1, the metal member B is placed on the table 2, …”というように、1つずつ書き出していく方が、文章は長くなりますが分かりやすくなります。

参考資料:
・リチャード・カウェル、佘錦華、『マスターしておきたい技術英語の基本』、コロナ社、2006
・片岡英樹、『必携技術英文の書き方55のルール』、 創元社、2004